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Howto補助金
企業は事業の拡大など、投資を検討しているところも多いでしょう。しかし、まとまった資金を集めるのは簡単なことではないため、補助金制度を活用している企業も多いです。
補助金であれば負担を抑えた資金調達が可能になりますが、ここで問題となるのが「補助金も課税される」ことです。特に金額の規模が大きな補助金であれば、それだけ多くの税金が発生することとなり、この部分が企業の頭を悩ませることもあります。
できる限り税金の負担を抑えるための方法を知りたい事業者も多いかと思いますが、その方法の一つとして「圧縮記帳」というものがあります。
今回は、補助金でも活用可能な圧縮記帳について詳しく解説し、活用するうえでの注意点などもいくつか紹介します。補助金における圧縮記帳について詳しく知りたい方におすすめの内容となっているので、活用を検討している事業者は参考にしてみてください。
国税庁:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/10/10_02.htm
補助金は国からの支援が受けられる方法の一つですが、実は補助金も受け取った場合、課税対象となるのです。国からの給付は非課税と認識されるケースが多いですが、法人は法人税、個人事業主は所得税として課税されます。
実際に法人税法第22条を見てもらうとわかりますが、そこには「原則として資本取引以外のものにかかる収益はすべて益金の額に算入する」と記載されています。
補助金に関しては「資本取引以外」のものとなりますので、国から給付されるものであっても課税対象となるのです。
ただし、法人税法では「圧縮記帳」と呼ばれる特例制度を設けられており、活用することで負担を一時的に減らすことができます。
圧縮記帳とは、簡単に説明すると補助金による課税負担を一時的に減らすことができる特例の会計処理のことです。
なぜ圧縮記帳が認められるようになったのかについては、補助金の効果を下げてしまうからです。例えば国からお金を受け取ったとしても、その一部は税金として国に返す必要があるとなると、企業側としては不満が生まれます。結果、「多額の税金がかかるのであれば補助金を活用しない」といった企業も増えてしまうため、それを防ぐために圧縮記帳というものが登場しました。
圧縮記帳を活用できれば、補助金への課税を一時的に回避することができ、繰り延べることで企業は補助金を活用して設備投資がしやすくなるのです。
補助金では圧縮記帳を活用することができますが、どのようなものでも対象となるわけではなく、ある一定の条件を満たしている場合のみ活用できます。具体的には下記項目が条件となりますので、参考にしてみてください。
① 国または地方公共団体から受け取る補助金、給付金、あるいはこれらに準ずるもので政令に定めるものの交付を受けること
② 国庫補助金等をもって交付された事業年度に固定資産の取得や改良にあてたこと
③ 国庫補助金等が交付された事業年度の末日までに国に返還不要が確定したこと
④ 国庫補助金等を受け取った法人が精算中でないこと
⑤ 法人税計算の基本となる会計処理上も圧縮記帳を行っていること
⑥ 法人税の確定申告書に圧縮記帳に関する明細書を添付していること
補助金を活用するうえで、圧縮記帳が適用されるのか不安に思われている方も多いでしょう。いくつか適用される補助金はありますが、その中でも代表的なものは下記のとおりです。
・ものづくり補助金
・事業再構築補助金
・IT導入補助金
・小規模事業者持続化補助金
上記の補助金は圧縮記帳を活用することができますが、注意点としては「補助金の交付の目的に適合した固定資産の取得にあてた場合」となりますので、それ以外の項目は上記に当てはまる補助金であっても適用外となります。
上記の見出しでも少し紹介しましたが、圧縮記帳はどのような経費でも認められるわけではありません。実際にものづくり補助金や事業再構築補助金など代表的なものは、幅広い経費が対象となります。しかし、すべての経費に圧縮記帳が活用できるわけではないので注意が必要です。
対象となる経費については、下記項目で簡単に紹介していますので参考にしてみてください。
・認められる経費:固定資産(建物や設備など)
・認められない経費:専門家経費や技術導入費などの固定資産以外
上記を見ても分かるとおり、基本的には固定資産のみ認められる経費となります。そのため、補助金の使いみちによっては圧縮記帳を利用できないケースもあるので注意が必要です。
圧縮記帳を活用した場合、活用しないケースと比較すると実質的に受け取れる補助金の額が異なります。ここでは具体的に計算方法について紹介するので、参考にしてみてください。
500万円の設備を手元資金200万円、補助金300万円で導入した事例で見ていきましょう。
1. 補助金の受け取り
現預金300万円/雑収入300万円
2. 設備購入
設備500万円/現預金500万円
3. 決算時の減価償却費の計上
減価償却費125万円/設備125万円
上記の場合、利益が補助金の300万円−125万円(減価償却費)=175万円となり、そこから支払う税率が40%となると175万円×40%=70万円です。このことから圧縮記帳を行わずに通常の会計処理を行った場合、補助金を実質的に受け取れるのは230万円になります。通常であれば300万円受け取れるはずの補助金が、圧縮記帳で会計処理をしないと大きく減ってしまう形となるのです。
上記と同じ条件で、圧縮記帳を行った場合の計算方法を見ていきましょう。
1. 補助金の受け取り
現預金300万円/雑収入300万円
2. 設備購入
設備500万円/現預金500万円
3. 圧縮損の計上
圧縮損300万円/設備300万円
4. 決算時の減価償却費の計上
減価償却費50万円/設備50万円
圧縮記帳の会計処理では、300万円(補助金)−300万円(圧縮損)−50万円(減価償却費)=50万円となりますが、ここで納税する金額はありませんので、0円となります。
上記のように、圧縮記帳を行うと実質的に受け取れる補助金は300万円となり、一時的に全額受け取ることが可能です。
補助金を活用するにあたって、圧縮記帳のメリットとデメリットについて知りたい方も多いでしょう。ここではメリットとデメリットに分けて紹介するので参考にしてみてください。
圧縮記帳のメリットは、固定資産を取得した年の税負担を軽減できることです。本来であれば固定資産を取得した年に税金を支払う必要がありますが、圧縮記帳を活用すれば単年で多くの納税をしなくてもよくなります。
これにより、設備などを取得する資金を準備しやすくなるメリットや、資金繰りの負担を軽減できる利点もあります。
固定資産の取得は多額の税金がかかってしまうデメリットがありますので、この部分の負担を少しでも解消できるというのは事業者にとっても安心できるポイントと言えるでしょう。
圧縮記帳を活用することで得られるメリットはいくつかありますが、もちろんメリットだけではありません。
デメリットの部分としては、圧縮記帳をしても課税を免除してもらえるわけではないことです。基本的に本来支払うはずの税金を将来に繰り延べできるだけなので、いずれは納税しなければなりません。
このように、必ずしもメリットだけではないため、事業者はこれらを踏まえながら圧縮記帳をすべきかどうか検討するようにしましょう。
圧縮記帳を活用するにあたっていくつか注意しておきたいポイントがあります。ここでは大きく分けて2つのポイントについて紹介するので参考にしてみてください。
注意しておきたいポイントの1つ目として、圧縮記帳はどの補助金でも活用できるとは限らないことです。
今現在活用できる補助金としては、「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」、「事業再構築補助金」等です。これらにつきましては適用される旨の文書が公開されていますので、固定資産の取得については活用することができます。
しかし、補助金の種類によっては活用できるかどうか確認できないケースもありますので、採択がされた場合には事務局に確認しておくことが大切でしょう。
圧縮記帳を利用するためには、適用される条件を満たしていなければなりません。これらをクリアしていないと活用することができないケースもあるので注意が必要です。
例えば適用されると思って補助金の申請を行ったものの、万が一適用不可となってしまった場合は予想以上の税金を支払わなくてはならなくなります。
せっかく補助金を活用したのに逆に負担が大きくなってしまう事態にもなりかねませんので、しっかりと慎重に検討することが大切です。
今回は補助金の活用における圧縮記帳について紹介しました。圧縮記帳を活用することで税金の負担を一時的に減らすことができます。特に規模が大きな補助金となると、1,000万円以上の補助金を受け取れる可能性もありますが、その分納税額も増えてしまうのが事業者にとっての悩みでもありました。
しかし、圧縮記帳を活用すれば税金の繰り延べが可能になり、一度の税金の負担は大きく減らすことが可能です。そのため、税金の負担をなるべく抑えたいと思うなら適用について検討してみてはいかがでしょうか。
しかし、圧縮記帳は一時的に税金の負担を減らせるだけですし、一定の要件なども必要になります。いくつか注意すべきポイントもありますので、これから圧縮記帳の適用を検討されている事業者の方はしっかりと検討してから活用するか決めることが大切です。
お困りのことがあれば、こちらから気軽にお問い合わせください。