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補助金
【目次】
厚生労働省が所管する助成金の中でも特に活用されているものと言えば雇用調整助成金ですが、ここ最近では「キャリアアップ助成金」が注目を集めています。
そもそも「キャリアアップ助成金とは何?」と思われている方や「活用したいけどどのような手順でやればいいの?」と思われている方も少なくないでしょう。
そこで今回の記事では、キャリアアップ助成金の概要から支給額、申請方法について詳しく解説します。
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者(有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者)の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業者に対して助成という形で支援してもらえる制度のことです。
非正規雇用労働者の雇用条件を改善することによって、仕事に対するモチベーションアップや事業の生産性向上、能力の向上など幅広いメリットが得られるため、これらを実現するためにキャリアアップ助成金を活用している企業が増えています。
また、助成金は補助金とは異なって申請の難易度もそれほど高くないのが特徴です。対象者であれば支給されるといった安心感もあるため、補助金の代わりとなるものを探している事業者にとってもおすすめと言えるでしょう。
公式サイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
ここからはキャリアアップ助成金を活用するにあたって詳しい概要について紹介します。支給対象事業者やコース詳細、支給額など詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
支給対象事業者は、下記5項目すべてに当てはまる企業です。下記の項目は全コース共通の要件となっているため、キャリアアップ助成金を活用したいと思った場合には必ず確認しておきましょう。
① 雇用保険適用事業者の事業主であること
② 雇用保険適用事業者ごとにキャリアアップ管理者を置いていること
③ 雇用保険適用事業者ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業者であること
④ 該当するコースの措置に係る対象労働者に対する労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにできること
⑤ キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業者であること
ただし、上記に当てはまる場合でも労働関係法令の違反をした事業者や、支給決定時に雇用保険適用事業者の事業主でない場合など、こういったケースでは助成金を受け取ることができないので注意が必要です。要件も含め注意事項も事前に確認しておきましょう。
キャリアアップ助成金には、活用できるコースが幅広く用意されています。ここからはそれぞれのコースについて概要から支給額まで詳しく紹介していくので参考にしてみてください。
正社員化コースは、有期雇用労働者等を正社員に転換または直接雇用した場合に助成してもらえるコースです。通常の支給額としては下記の通りとなっています。
①有期から正規になった場合1人あたり | 57万円(大企業は42万円7,500円) |
②無期から正規になった場合1人あたり | 28万5,000円(大企業は21万3,750円) |
また、各コースには「加算措置」が設けられており、ある一定の要件を満たすと通常の支給額に加算されます。正社員コースでは下記5つの項目が加算措置制度の対象です。
・派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用した場合
1人あたり28万5,000円
・対象者が母子家庭の母または父子家庭の父の場合
上記表の支給額①のケースでは1人あたり95,000円
上記表の支給額②のケースでは1人あたり47,500円
・人材開発支援助成金の特定の訓練終了後に正規雇用労働者へ転換した場合
上記表の支給額①のケースでは1人あたり95,000円
上記表の支給額②のケースでは1人あたり47,500円
・「勤務地限定・職務限定・短時間正社員」制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を該当雇用区分に転換した場合
1事業者あたり95,000円
賃金規定等改定コースは、すべてまたは一部の有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を2%以上増額改定し、昇給を行った場合に助成金を受け取れるコースです。
通常の支給額は下記のように対象労働者数によって決定します。
①対象労働者が1〜5人まで1人あたり | 32,000円 |
②対象労働者が6人以上で1人あたり | 28,500円 |
支給額は上記のとおりとなっていますが、賃金規定等改定コースは1年度1事業者あたり100人までとなり、申請回数は1年度で1回のみです。
また、加算措置制度もあり、下記3つの要件を満たした際に適用されます。
・中小企業において3%以上5%未満の増額改定
1人あたり14,250円
・中小企業において5%以上の増額改定
1人あたり23,750円
・職務評価の手法の活用により、賃金規定等を増額改定した場合
1事業者あたり19万円
賃金規定等共通化コースは、有期雇用労働者等に関して正規雇用労働者との共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成金を受け取れます。
支給額は下記のとおりとなっており、1事業者あたり1回のみの申請が可能です。
1事業者あたり | 57万円 |
なお賃金規定等共通化コースに関しては、加算措置制度はありません。
賞与・退職金制度導入コースは、賞与や退職金制度を新たに設け、支給または積立を実施した場合に助成金を受け取れます。
支給額は下記のとおりとなり、申請は1事業者あたり1回までです。
1事業者あたり | 38万円 |
また、賞与・退職金制度導入コースには加算措置が設けられており、下記要件を満たすと加算措置を実行してもらえます。
・賞与と退職金制度を同時に導入
1事業者あたり16万円
短時間労働者労働時間延長コースとは、短時間労働者の労働時間を延長し、処遇の改善を図って新たに社会保険の被保険者とした場合に助成金を受け取れるコースです。
短時間労働者の労働時間を3時間以上延長し、新たに社会保険に適用した場合は下記の金額を支給してもらえます。
短時間労働者1人あたり | 22万5,000円 |
また、労働者の手取り収入が減少しないように労働時間を延長し、基本給の上昇と新たに社会保険に適用させた場合は下記の金額を支給してもらえます。
1時間以上2時間未満の延長で1人あたり | 55,000円 |
2時間以上3時間未満の延長で1人あたり | 11万円 |
ここではキャリアアップ助成金の申請方法について紹介します。ただし、各コースによって要件が異なるため、少々申請手順や方法が異なるケースもあります。特に正社員化コース以外での申請を検討している事業者は、公式サイトでも手順について確認してみてください。
そもそもキャリアアップ計画とは、有期雇用労働者等のキャリアアップに向けた取り組みを計画的に進めるため、今後の大まかな計画のことを指します。例えば対象者や目標、期間など事業主が行う取り組みのことです。
キャリアアップ助成金を申請するためには計画書の作成が必須となり、完成したら事務局へ提出しましょう。
正社員へ転換する規定がない場合、就業規則や労働協約等、それらに準ずるものに転換制度を規定します。具体的には下記の項目の記載が必須です。
・試験等の手続き
・対象者の要件
・転換実施時期
そして、改定後は労働基準監督署へ提出します。
転換・直接雇用に際し、就業規則等の転換制度に規定した試験等を実施してください。そして正社員としての雇用が完了後は雇用契約書や労働条件通知書を対象者へ通知します。
正社員への転換・直接雇用が完了後、6ヶ月の賃金を支払います。ただし、支給する際には転換後6ヶ月間の賃金を転換前6ヶ月間の賃金と比較し、3%以上増額している必要があります。
STEP4の「転換・直接雇用後6ヶ月分の賃金支払い」が完了後、支給した費の翌日から換算して2ヶ月以内に支給申請を行う必要があります。支給申請には期限が設けられていますので、必ず忘れないように提出するようにしましょう。
支給申請を行ったら、事務局にて審査が実施されます。提出した書類等、問題がなければ支給が決定します。なお、申請状況によっては審査に時間がかかることもあるので余裕を持った申請がおすすめです。
キャリアアップ助成金を正しい手順で受け取るためには、いくつかの注意点をしっかりと守る必要があります。ここでは特にチェックすべき注意点について紹介するので参考にしてみてください。
キャリアアップ計画の作成は、正社員への転換や賃金アップを行う前に策定して提出しなければなりません。正社員への転換などを行ったあとに提出したとしても受け付けてもらえないため、必ず手順を守って作成し、提出することが大切です。
先程も少し紹介しましたが、キャリアアップ助成金の申請は6ヶ月分の賃金が支払われた日の翌日から2ヶ月以内と決まっています。つまり、この期間中に申請しないと助成金は支払われません。期日を過ぎてしまうとせっかく進めてきたものが意味のないものになってしまうので注意が必要です。
キャリアアップ助成金に限らずですが、指定口座への振り込みまで1年程度の期間がかかります。それまでの期間は事業者が負担することとなるため、資金繰りなどの計画もしっかりと立てなければなりません。
今回はキャリアアップ助成金について紹介しました。助成金はうまく活用することで人材育成や労働環境の整備ができるなどさまざまなメリットがありますが、実際に助成金を受け取るためには厳しい審査をクリアしなければなりません。
特にキャリアアップ助成金はキャリアアップ計画の策定なども必要です。初めて申請される事業者にとって少々難易度は高めとなりますので、申請が複雑で困っているという方は専門家への依頼をおすすめします。
専門家なら補助金や助成金の情報を詳しく知っているため、相談しながら進めることでスムーズに申請を行うことができるでしょう。
厚生労働省が所管する記事を知りたい場合はこちらの記事もご参照ください。
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